他県の人には聞き馴れない言葉だろうが、「わっぜえか」とは鹿児島弁で「凄い」という意味である。黒豚わっぜえか丼は、2004年の九州新幹線「つばめ」を機に、鹿児島県料飲業生活衛生同業組合が、新しい、新しい名物料理を育てようと提唱して開発したもの。特産の黒豚を使うことを統一テーマに、加盟店数十件がそれぞれに工夫を凝らし、オリジナリティーを競って参加している。 同組合の役員を務めるこの店のご主人・藤井勝海さん(70)はどう対応したか。 まず鰻屋だから、ご飯の中に鰻の蒲焼きと海苔を入れることにした。そしてごはの上には黒豚の照り焼きを載せる。薄切りのロースを醤油、酒などで作ったタレに四、五時間漬けて下味をつけ、焼く時に味噌などで味を調える。照り焼きの下に、味が混ざらないようにキャベツの千切りを敷く。キャベツは豚肉と相性がいいし、彩りもよい。 試食してみて、黒豚と鰻はミスマッチでは?との最初の懸念は払拭された。上質の黒豚は上品な仕上がりで旨く、鰻ももちろん、きちんとした味だった。異和感なく、それぞれの味を楽しむことができた。1,620円は断然安い。 もともと創業36年目に入った歴とした鰻専門店で、鰻の刺身や白焼きまで付く会席から、深蒸し(いわゆるせいろ蒸し)、櫃まぶし、関東風、関西風のうな重、うな丼までメニューは揃っている。 文 筒井ガンコ堂様より